書籍

先日のオンライン講座で、児童文学をオススメする理由を

子どもの視点を理解するのに役立つから

とご説明し、いくつかの作品をご紹介しました。その際、「もっとおすすめの本を教えてください」とのご要望をいただきました。自信はありませんし、私の限られた読書体験の中から選んだものですが、心に残る書籍(児童文学以外も含む)をご紹介したいと思います。

私自身が感じた喜びを皆さんと共有できればと考え、これらの書籍を選びました。もし少しでも興味を持っていただける作品があれば、ぜひ手に取ってご一読いただければ幸いです。


「はなをくんくん」ルース・クラウス (著)

「はなをくんくん」は、子どもたちの感性を刺激し、自然の神秘を探求する心を育む絵本です。著者のルース・クラウスは、「感じる」ことの大切さを巧みに物語に織り込んでいます。

真冬の森を舞台に、冬眠中の動物たちが突然目覚め、一斉に駆け出していく様子は、読者の好奇心をかき立てます。雪の中を駆ける動物たちは、「みんなはなをくんくん」と、何かを嗅ぎ分けているようです。一体何が彼らを突き動かしているのでしょうか。

物語は、動物たちが「みんなぴたり」と止まり、「みんな『うわあい!』」と叫ぶ場面で、クライマックスを迎えます。彼らが発見したものとは何なのか、その謎を解くのは読者に委ねられています。

この絵本は、子どもたちに事実を押し付けるのではなく、想像力を働かせ、自ら発見する喜びを味わってもらうことを目的としています。「センス・オブ・ワンダー」の著者レイチェル・カーソンも述べているように、「知る」ことよりも「感じる」ことが重要なのです。

私にとってかけがえのない一冊の為、一番最初にご紹介しました♪


「ゆきのひ」エズラ・ジャック・キーツ (著)

絵本を開くと、表紙の大胆な暖色から一転、優しい色合いの見返しが目を引きます。そこには、「ゆきのひ」という題名とは対照的な温もりが感じられ、読者を物語の世界へと誘います。

次のページでは、雪の白と空の青が織りなす静かな情景の中に、真っ赤な服を着た褐色の肌の男の子が登場します。周囲の静けさと男の子の動きのコントラストが、絵本の魅力を引き立てています。

「ゆきのひ」は、大都会に雪が降ると起こる奇跡のような変化を、主人公の男の子ピーターの目を通して描いた物語です。雪が街を包み込むと、いつもの喧騒が静寂に変わり、子どもたちは歓喜に満ちて遊び始めます。

「ゆきのひ」は、1963年にコルデコット賞を受賞するなど、高い評価を得ている絵本です。その美しいイラストレーションと心温まるストーリーは、子どもから大人まで、幅広い世代を魅了します。ぜひ、この機会に「ゆきのひ」の世界に浸ってみてください。きっと、雪の日の奇跡に出会えるはずです。


「農場の少年」ローラ・インガルス ワイルダー (著)

ローラ・インガルス・ワイルダーの自伝的児童文学です。

19世紀後半のアメリカ農村を舞台に、少年アルマンゾの成長物語が描かれています。厳しい自然の中で、家族とともに働き学ぶアルマンゾの姿を通して、勤勉さや誠実さ、家族の絆の大切さを伝えてくれます。

生き生きとした筆致で綴られた農村の暮らしぶりは、当時の文化や価値観を知る上でも貴重です。子どもから大人まで楽しめる心温まる作品として、ぜひ手に取ってご覧ください。


「よあけ」ユリー・シュルヴィッツ(著)

物語は、暗闇の中で静まり返った情景から始まります。ページをめくるたびに、少しずつ変化していく風景が描かれ、読み手を絵本の世界へと引き込んでいきます。最初は謎めいていた黒々とした影は、実は木であることが明らかになり、その下には老人と孫の姿が。そして、月明かりに照らされた山と湖の風景が広がります。

絵本の魅力は、言葉の選び方にもあります。「おともなく、しずまりかえって、さむく しめっている。」という簡潔な言葉が、夜明け前の静寂と神秘的な雰囲気を見事に表現しているのです。

やがて、夜明けとともに世界が動き出し、闇から光へ、彩りの世界へと変化していく様子が描かれています。子どもだけでなく大人にも深い感動を与えてくれます。


「ロバのシルベスターとまほうの小石」ウィリアム スタイグ (著)

著者のウィリアム・スタイグは、ベトナム戦争のさなかに、この物語を紡ぎました。温かいユーモアとひたむきな愛情に満ちたストーリーは、読む人の心を優しく包み込み、人生の本質について考えさせてくれます。

スタイグは、「児童文学を含む芸術は、地上のどんな場所をも宇宙の中心に据えることができる」と語ります。

科学が理解の幻想を与えるのに対し、芸術は謎を謎のままに受け入れ、人生について学ぶ手助けをしてくれるのです。不思議さを大切にすることは、人生への敬意に繋がります。

1969年に発表されて以来、世界中で愛され続けている絵本です。年間最優秀絵本賞と最優秀児童文学賞を受賞したこの作品は、子どもから大人まで、幅広い世代の心を捉えて離しません。ぜひ、この機会にスタイグの世界に触れ、魔法の小石が織りなす奇跡の物語をぜひ、手に取ってご覧ください。


「マドレーヌといぬ」ルドウィッヒ・ベーメルマンス(著)

『マドレーヌといぬ』は、一度読み始めたら心が踊り出すような、魅力溢れる絵本です。

絵本の魅力は、何と言ってもその絵にあります。黄色の地に黒い線で描かれたマンガ風のページの間に、極彩色の風景画が現れる。それは、女の子たちが迷子の犬を探して歩き回ったパリの通りや広場、市場などを描いたもの。まるで自分もパリの街を散策しているかのような気分になれます。

そして、絵だけでなく、言葉の面でも秀逸な作品。絵が語っていることを、重ねて言葉で語る野暮はありません。

この絵本を読めば、パリの街に迷い込んだような、不思議な体験ができるはず。ぜひ、手に取ってご覧ください。


「おかえし」村山 桂子 (著)

『おかえし』は、贈り物の応酬が引き起こす予想外の展開を描いた、ユーモアあふれる絵本です。たぬきとキツネの母子が繰り広げる”お返し合戦”は、私たちの日常にも通じる人間性を鋭く突いています。

物語は、キツネの奥さんがたぬきの家を訪れ、イチゴを贈ることから始まります。お返しにタケノコを贈られたキツネの奥さんは、さらに花を贈り返します。こうして、お返しのお返しが繰り返され、両家は贈られたものであふれかえってしまうのです。

しかし、お返しの品を尽くした、たぬきとキツネの奥さんは、とんでもない行動に出ます。まさかそこまでするとは!と驚きつつも、思わず笑みがこぼれてしまう結末が待っています。

この物語は、北米インディアンの贈答儀式「ポトラッチ」を踏まえて書かれました。贈り物を受けた者は送った者に支配されたような意識を持ち、それを解消するためにお返しをするという人間の本質を、動物たちの愉快なやりとりを通して浮き彫りにしているのです。

私たちの中に潜む「お返し」への欲求を、楽しくも痛快に描き出したこの作品を、ぜひ手に取ってみてください。贈答の本質を見抜く鋭い視点に、きっと驚かされるはずです。


「飛ぶ教室」エーリヒ・ケストナー(著)

ナチス・ドイツ時代の抑圧的な社会に生きる少年たちの、自由への渇望と友情を描いた物語。

厳格な寄宿学校を舞台に、主人公マルティンと仲間たちの秘密の集会を通して、想像力の力と抵抗の精神が描き出されています。


権威に屈しない子どもたちの姿に私は心を揺さぶられ、自由の尊さを再認識させられました。また、想像力の翼を広げる子どもたちの姿は、今でも魅了されます。


「あおい目のこねこ」エゴン・マチーセン (著)

『あおい目のこねこ』は、デンマークが生んだ絵本作家エゴン・マチーセンの代表作です。鮮やかな白地に黒の大胆な線で描かれた、青い目の不思議な猫の冒険物語は、言葉の壁を越えて読者を魅了します。

表紙の青い目を閉じた猫の表情から、裏表紙の緊張感あふれる佇まいまで、一筆一筆に作者の鋭い観察眼と表現力が感じられます。ページをめくると、青い目を光らせ、横目で睨みながら歩く元気な猫が現れ、読者をネズミの国を目指す旅へと誘います。

言葉が読めなくても、絵から物語の筋を読み取ることができるのが、この絵本の大きな魅力です。墨線で描かれた動物たちの生き生きとした表情は、子どもたちの共感を呼ぶことでしょう。

ぜひ、お子様と一緒にページをめくりながら、青い目の猫の世界に浸ってみてください。言葉を超えて心に響く、普遍的な物語の力を感じられるはずです。


「十一歳の誕生日」ポーラ・フォックス(著)

現代社会では、プレゼンテーション能力が重視され、明るいハキハキとした子どもが高く評価される傾向にありますが

この作品は、そんな表面的な印象だけでは測れない、子どもたちの豊かな内面世界に向けられた作品です。

大切なのは、一人一人の子どもの内面に寄り添い、理解しようと努めることなのではないか。。この作品は、そんな気づきを私に与えてくれた貴重な一冊です。


「ハルばあちゃんの手」山中恒 (著)

人生の本質を問いかける感動的な絵本です。主人公ハルの一生を通して、生きることの意味と美しさを描き出しています。

物語は、生命力にあふれた赤ちゃんの顔のアップから始まります。続く場面で描かれる手は、遊びや創造の喜びを表現し、心を込めて作ったものを贈り合う歓びを伝えます。絵本は、日常の中で成長するハルの姿を、真摯な筆致で捉えています。

ハルは、愛する人との別れや悲しみを経験しますが、それを乗り越え、1日1日を力強く生きていきます。祭りでの踊りは、孤独なハルの慰めであり、同時に、人々とともに生きる喜びを分かち合う場でもあります。

ハルの人生は、手と手を組み合わせて愛する人を見つめる豊かな表情と、長年連れ添った夫婦の顔に刻まれたシワに象徴されています。故郷に戻ったハルばあちゃんが、子どもや孫の前で美しく踊る姿は、月光に照らされて輝きます。

子どもから大人まで、誰もが生きることの意味を考えさせられる一冊です。ぜひ、手に取ってご覧ください。


「ぞうのババール こどものころのおはなし」ジャン・ド・ブリュノフ(著)

大人が選ぶ子どもたちにとって「ためになる本♪」には最も選ばれにくい1冊かもしれませんが、私の心に温かな光を灯してくれた1冊です。

この絵本は、子を持つ母親と、病のため死を予感した父親との合作で、子どもを楽しませたい思いと共に、励ましと祈りが込められているように感じられます。

主人公のババールは、人間の世界に飛び込んでいく勇気と好奇心を持った子象です。彼の目を通して、私たちは子ども時代の無邪気な楽しみと、それを心配する大人の視点の両方を味わうことができます。

ババールは森を離れ、パリの街で新しい世界を発見します。大金持ちのおばあさんとの出会いや、デパートでの買い物、エレベーターの冒険など、彼の体験は読者を魅了してやみません。

著者自身の経験から生まれたメッセージは、子どもだけでなく、大人の私たちの心にも深く響くと思います。


「もりのなか」マリー・ホール・エッツ (著)

物語は、森へラッパを持って散歩に行く男の子の冒険から始まります。次々と現れる動物たちとの交流を通して、子どもの内面世界が生き生きと描かれます。ライオン、象、熊、カンガルー、こうのとり、猿たちとの会話や仕草からは、子どもならではの感性や創造性が感じられます。

この絵本は、子どもの遊びが持つ言葉の力や、遊びを通して育まれる想像力と社会性の重要性を示唆しています。遊びは、子どもが人間として成長するための土台なのです。

大人にとっても、この絵本は示唆に富んでいます。子どもと一緒に物語の世界に入り込むことで、自分の中に眠る「子ども」を呼び覚まし、子どもの気持ちに共感できるようになると思います。

特に、最後のかくれんぼの場面で交わされる男の子とお父さんの会話は、親子関係の本質を問いかけているように私は感じた作品でした。


「フォスターさんの郵便配達」エリアセル・カンシーノ (著)

この物語は、1960年代のスペインの海辺の村を舞台に、勉強嫌いで学校をよくさぼる少年が、村のただ一人のイギリス人フォスターさんのもとに郵便物を届けながら、周りの大人たちとの交流を通して成長していく姿を描いています。

作品の背景には、スペイン市民戦争やフランコ軍事政権下の歴史があり、少年は村外れの小屋に暮らす皮なめし職人の秘密を知ることになります。この職人は、実は人民戦線派の重要人物であり、治安警察に追われている身でした。また、フォスターさんとの関係性も徐々に明らかになっていきます。

カンシーノは、近現代の歴史に真摯に向き合い、文学を通して若者にその現在の成り立ちを伝えようとする作家です。この作品は、スペインの歴史と現在を巧みに織り交ぜながら、少年の成長物語を感動的に描いています。


「まりーちゃんとひつじ」フランソワーズ (著)

素朴で温かい雰囲気に包まれたこの物語は、読む人の心を優しく包み込んでくれます。

挿絵は、刺繍のデザインを思わせるシンプルな線と形、柔らかくて鮮やかな色彩が特徴的です。一見稚拙に見えるその表現は、技巧を排した純粋さを感じさせ、読者に親しみを抱かせてくれます。

さらに、童謡詩人の第一人者である與田準一氏による訳文が、挿絵の表現と見事に調和しています。温かい語り口とのんびりとしたリズムは、聞き手と読み手の両方を物語の世界へと誘います。

物語の主人公まりーちゃんは、愛羊ぱたぽんが次々と子羊を生み、その毛を売って欲しいものを手に入れる夢を膨らませます。しかし、現実には子羊は1匹だけ。それでもまりーちゃんは、子羊を大切に思うぱたぽんの気持ちを汲んで、喜びを感じるのです。

この絵本は、子どもの純真な心と、夢と現実の間で揺れ動く様子を、ユーモアを交えて描き出しています。そのほのぼのとした世界観は、今の時代にこそ必要とされているのかもしれません。

時代を超えて愛される絵本の魅力を、存分に味わってみてはいかがでしょうか。


「からすが池の魔女」エリザベス・ジョージ・スピア(著)

17世紀のニューイングランド。ピューリタン社会の閉塞感の中で、一人の少女が自由を求める物語です。

主人公キットの孤独と友情、そして勇気を描き出します。バルバドス島から故郷に帰ったキットは、不寛容なピューリタン社会になじめずにいました。しかし、村はずれのからすが池で出会った老婆ハンナとの絆が、彼女の心を解き放っていきます。

魔女狩りの恐怖が村を覆う中、キットとハンナの友情が試される感動的な物語が展開され・・・

「からすが池の魔女」が描く普遍的なテーマは色々と考えさせられました。


「こいぬのうんち」クォン ジョンセン (著)

『こいぬのうんち』は、一見とるに足りないものに光を当てた、心温まる絵本です。韓国の作家と画家が生み出したこの作品は、命の尊さと愛の深さを、子犬のうんちとタンポポの物語を通して伝えています。

物語は、人気のない場所でうんちをする子犬の姿から始まります。周りからは汚いと蔑まれ、泣き出してしまう子犬。しかし、雨の季節、動けなくなった子犬の前に現れたタンポポの芽は、子犬に新たな希望を与えます。

タンポポは、自分が美しい花を咲かせるためには、うんちが肥やしになってくれることが不可欠だと語ります。子犬のうんちは、タンポポの言葉に感動し、芽を抱きしめます。やがて、雨に打たれて溶けたうんちは、土に溶け込み、タンポポの栄養となります。そして、春が来て、タンポポは美しい花を咲かせるのです。

一見価値のないものにも、生命を育む力があること、そして、自己犠牲の愛の偉大さを伝えてくれる作品です。


「トミーが三歳になった日」ミース バウハウス(著)

ナチス支配下のチェコにあったテレジン収容所で、父親が息子トミーへの愛情を込めて描いた一連の絵を基にした絵本です。

物心ついてから収容所しか知らない我が子に、壁の外にある自由な世界を伝えようとした父親の思いが、温かくも切ない絵と言葉で表現されています。

この作品の魅力は、過酷な状況下でも決して失われない親子の絆と、子どもたちの自由と幸せを願う親の強い思いにあるように私は感じています。絵の中のトミーは、収容所の外の世界で伸びやかに過ごしています。そこには、時には怪我をすることさえも含めた、真の自由が描かれているのです。

私たちは、子どもを守ろうとするあまり、時として彼ら・彼女らの自由を制限してしまいがちです。しかし、この作品は、子どもたちが自分の力で生きていく力を育むためには、ある程度の危険や困難も経験する必要があることを示唆していると感じられます。

美しくも悲しい絵と言葉で伝える感動的な作品です。ぜひ、手に取ってご覧ください。


「もこ もこもこ」谷川 俊太郎 (著)

『もこ もこもこ』は、詩人の谷川俊太郎氏と抽象画家の元永定正氏がタッグを組んだ、一風変わった絵本です。一見、極めてシンプルな絵と文章に戸惑う大人も多いかもしれません。しかし、子どもたちの中には、この不思議な世界観に惹かれ、夢中になる子がいるのです。

大人は、絵本の内容を理解しようと、理屈で考えがちです。一方、子どもは感覚を頼りに、好奇心を持って絵本の世界に飛び込んでいきます。「もこ もこもこ」の表紙を見た瞬間、「なんだこれは?」という興味が湧いてくるはずです。

カバーを外して最初のページを開くと、一見何もないように見える頁に、よく目を凝らすと「しーん」という文字が見えてきます。この「しーん」を声に出して読むと、まるでその音が画面に広がっていくかのような不思議な体験ができます。

きっと、言葉と絵の新たな可能性に気づかされるはずです。大人の常識に捉われない、自由な読書体験を楽しんでみませんか。


「300年まえから伝わるとびきりおいしいデザート」エミリー・ジェンキンス (著)

この絵本は、一見するとデザートの作り方を説明しているだけのようですが、実はそれ以上に深い洞察に満ちています。

1710年のイングランドから始まり、1810年のアメリカ南部、そして2010年のカリフォルニアに至るまで、100年ごとに変化するブラックベリー・フールの作り方は、その時代の社会状況や人々の暮らしぶりを巧みに反映しています。

材料の入手方法、調理器具、召使の存在、家事への男性の参加など、絵本の一コマ一コマが物語る内容は実に豊かで、言葉だけでは語り尽くせない歴史の断片が散りばめられています。

また、この絵本は、変化の中にある普遍性についても問いかけています。300年という長い時間の中で、人々の生活や社会構造は大きく変化しましたが、ブラックベリー・フールというデザートは、その変化の中で生き延びてきました。それは、変化する社会の中で、普遍的な価値を持ち続けるものの象徴とも言えるでしょう。

ぜひこの絵本を手に取ってご覧ください。


「かいじゅうたちのいるところ」モーリス・センダック (著)

怖いもの見たさを持つ子どもたちは、この絵本に強く惹かれるはずです♪

物語の主人公は、いたずら好きの男の子マックス。反抗期、真っ只中のマックスは、お母さんの言うことを聞かず、大暴れします。怒ったお母さんに夕飯抜きで寝室に閉じ込められたマックスは、自分だけの空想の世界へと旅立ちます。そこは、大人の影響が及ばない、自由に行動できる不思議な場所です。

マックスの冒険は、森から始まり、大海原を経て、怪獣たちのいる島へと続きます。センダックの巧みな絵本作りは、場面の移り変わりとともに、マックスの心の広がりを見事に表現しています。

島に到着したマックスは、怪獣たちと対決し、王様になります。歌ったり、踊ったり、行列をしたり、やりたい放題の夢の世界を満喫します。しかし、遊び疲れたマックスは、やがて家族の元へ帰りたくなるのです。

『かいじゅうたちのいるところ』は、親子で読み合うのに最適な絵本だと思います。子どもは、マックスの冒険に没頭し、自己表現の大切さを学び、一方、親は、子どもの内なる世界への理解を深められると思います。ぜひこの絵本を手に取ってご覧ください。


「太陽の戦士」ローズマリ・サトクリフ (著)

古代ブリタニアの地で、運命に翻弄される一人の若者の物語。

ケルト人とローマ人の文化が衝突する中で、自らのアイデンティティを模索する主人公ベリックの姿が描き出されています。


緻密な歴史研究に基づいて再現された古代の世界観、ベリックの内面的な葛藤と成長、そして時代の転換期に生きる人々の姿。これらが織りなす壮大な物語は、読んでいると魅了されます。

私たちも現在、時代の転換期の真っただ中におり、何か感じられるものがある気がします。


「とべバッタ」田島征三 (著)

絵本の主人公は、小さな茂みに隠れ住む一匹のバッタ。周りには危険な敵ばかりで、ビクビクしながら暮らす日々に嫌気がさしたバッタは、ある日、大胆な決意をします。隠れるのをやめ、大きな岩の上で堂々と日向ぼっこを始めたのです。

敵の襲撃を受けながらも、バッタは死に物狂いで跳ね続けます。obstaclesを次々と乗り越え、ついには自由を手に入れるのです。風に乗って、自分の行きたい方へ自由自在に飛んでいくバッタの姿に、きっと心が躍ることと思います。

そして、ラストシーンの素晴らしさは格別です。ぜひご自身の眼で確かめてみてください。


「トーラとパパの夏休み」リーサ モローニ (著)

スマホに夢中のパパと、好奇心旺盛な娘トーラが繰り広げるキャンプの物語は、世代間のギャップと理解し合うことの大切さを感動的に伝えています。

絵本の魅力は、リアルな親子の姿にあります。パソコンとスマホに囲まれ、忙しく過ごすパパと、自由奔放に想像力を膨らませるトーラ。二人の価値観の違いは、現代の多くの家庭に通じるものがあるのでは!?

キャンプ場での出来事を通して、パパとトーラは少しずつ歩み寄っていきます。

モローニの柔らかな文章と、母親が手がける温かみのあるイラストが相まって、登場人物たちの心情が伝わってくると思います。きっと皆さんの心に響くものがあるはずです。ぜひ手に取ってご覧ください。


「おおきなおおきな おいも」赤羽 末吉 (著)

物語の元となったのは、東京の幼稚園で実際にあった出来事。芋掘り遠足が雨で延期になり、落ち込む子どもたちの気持ちを先生が巧みに引き上げ、一緒に夢を広げていく様子は、保育の真髄を感じさせます。

この感動的な実話に、画家の赤羽末吉さんが想像力を加えて完成したのがこの絵本です。

言葉と絵の絶妙な組み合わせが、子どもたちの夢を力強く、生き生きと表現しています。

子どもの想像力の素晴らしさ、そしてそれを引き出す保育の力。この絵本は、その両方を感じさせてくれる、稀にみる傑作です。ぜひ手に取ってご覧ください。


「オシムの伝言」千田 善 (著)

オシムは、複雑さと向き合うことを恐れません。彼の故郷であるサラエボでの経験が、その姿勢を形作ったのかもしれません。

日本の学校や社会が優秀さの基準とする「秩序を乱さないこと」に疑問を投げかけ、サッカーにおいては、むしろ「若い連中」の存在が重要だと説きます。そのエスプリの効いた言葉は、読む者の心を捉えて離しません。

また、本書では、オシムが20歳の頃、プロサッカー選手になるか数学者になるかで悩んだエピソードも紹介されています。サッカーだけでなく、数学と物理に秀でていたオシムの知られざる一面が垣間見えます。

オシムの言葉と人生観に触れ、私自身、生き方を見つめ直すきっかけなった1冊です。ぜひ、この機会に手に取ってご覧ください。


「おやすみなさいおつきさま」マーガレット・ワイズ・ブラウン (著)

ゆっくりと絵を見せながら静かに語りかけると、子どもたちは絵の隅々まで目を向け、ものの名前を発見する喜びを味わえます。

身の回りのものが言葉で表されていることに気づくのは、言葉の経験として大切なこと。この絵本をきっかけに、生活空間の中で言葉探しや言葉当てをするのも楽しい遊びになるでしょう。

人形の家との大きさ比べで気づいたら、各場面でネズミを探してみましょう。意外なところにいるかも。絵だけのページでは、「おやすみ だれかさん」の「だれかさん」を想像するのも楽しい時間です。

やがておばあさんの姿が消え、すべてが静まり返る。眼に見えない「音」の不思議も感じられます。

そして最後に、絵本の秘密が明かされます。色彩画に描かれた二つの時計の針を読めば、物語の時間がわかるという仕掛け。本当によく考えられた絵本なのです。

絵を介して言葉と出会い、想像力を広げる楽しさを、存分に味わってもらえるはずです。


「なぞなぞの本」福音館書店編集部 (編集)

『なぞなぞの本』は、世界中の無名の人々の知恵と創造性が結晶化した、言葉の宝石箱とも言うべき一冊です。

編集部が丹念に収集した世界各地のなぞなぞは、単なる言葉遊びではなく、その土地の文化や価値観を映し出す鏡でもあります。

イギリスの「沈黙」を表すなぞなぞ、フィンランドの「秘密」の定義、などなど。。なぞなぞは、一見シンプルながらも奥深い言葉の力を感じさせてくれます。

ぜひ手に取ってお確かめください。


「はっぴぃさん」荒井 良二 (著)

人々の心の中に住む、願いを叶えてくれる存在。その正体は神か仏か、誰にもわかりません。でも、山の頂上にある巨大な岩に、時折姿を現すと言われています。

ある日、のろまな少年とせっかちな少女が、はっぴぃさんに悩みを聞いてもらおうと、山登りを始めます。少年はノロノロ、少女はせかせかと、まるでウサギとカメのように山道を登っていきます。

暗い森を抜けた先に見えてきた大きな岩。「はっぴぃさんの おおきな いし!」と、2人は歓声を上げます。ページをめくった瞬間、青から黄色へと変わる色調が、言葉では表せない開放感を読者にもたらします。

岩の上で待つ2人の前に現れたのは、カタツムリ、ウサギ、ハト、リス。そして空から降り出した雨。離ればなれだった2人は、青いシートで雨宿りしながら、自然と肩を寄せ合い、お互いの願い事を打ち明けます。

雨が上がり、太陽が2人を優しく照らします。少女は言います。「きっとノロノロは何でも丁寧だからだと思うわ」。少年も気づくのです。「慌てるのは、何でも一生懸命だからだと思うよ」と。

はっぴぃさんには会えなかったけれど、太陽を見上げる2人は、まるではっぴぃさんに出会えたかのように感じるのでした。

誰もが抱える悩みや願い。でもそれは、自分の中にある大切な何かのサインなのかもしれない。そんなメッセージを感じた作品です。


「やりすぎ教育 商品化する子どもたち」武田 信子 (著)

現代の教育システムが子どもたちを商品化し、本来の学びの意味を見失っていると警鐘を鳴らす一冊です。

本書の魅力は、教育の根本的な問題に切り込んでいる点にあります。著者は、日本の教育が子どもたちに勉強を “強いて勉めさせる” ものになっていると指摘します。学歴や収入を重視するあまり、子どもの個性や意思を尊重せず、まるで “高値で売れる商品” を作るかのように教育が行われていると言うのです。

また、世界各国の教育事情も紹介されており、読者の視野を広げてくれます。例えば、イギリスのケンブリッジ大学では “遊び” を研究するセンターがあり、デンマークでは子どもの成績を比較するようなテストは行われないなど、日本とは異なる教育観が示されています。

私自身、この本を通して、教育の本質を見つめ直し、子どもたちが自由に遊び、学び、成長できる環境を作るにはどうすればよいのか考えるきっかけになった一冊です。


「セーターになりたかった毛糸玉」津田 直美 (著)

物語の主人公は、10個の束になって買い手を待つ赤い毛糸玉たち。彼らの夢は、セーターになること。ある日、おばあさんが現れ、10個まとめて購入します。おじいさんのセーターを編み始めるおばあさん。毛糸玉たちは、それぞれの役割を期待するのですが、1個だけ余ってしまいます。箱にしまわれた毛糸玉は、翌朝、人形のセーターになることを夢見ますが、出来上がったのは手袋でした。

おばあさんの孫の男の子に贈られた手袋は、大切にされ、幸せな日々を過ごします。しかし、ある日、男の子は手袋を置き忘れてしまうのです。ここから手袋の運命は、飼い犬やネズミ、猫との出会いで大きく変転していきます。

読み進めるうちに、私たちは毛糸玉に感情移入し、その運命に一喜一憂するでしょう。そして、結末に向けてのドキドキは・・・ぜひ手に取ってお確かめください。


「子育てのノロイをほぐしましょう 発達障害の子どもに学ぶ」赤木和重 (著)

この本の最大の魅力は、従来の子育て本とは一線を画す点にあります。多くの子育て本が、知識やスキルを身につけて子どもを “上手に” 育てることを目的としているのに対し、この本は子育てを “ゆるく” 楽しむことを提案しています。

著者自身が発達障害心理学を専門とする研究者であり、発達障害の子どもたちと向き合ってきた経験から、子育ての本質について深い洞察を示しています。子どもの個性を尊重し、その子らしさを大切にすることの重要性を説きます。

例えば、アメリカでの滞在中に出会った “トンプソン” との交流エピソードは、異文化の中で子育ての悩みを共有する様子が微笑ましく描かれています。


「こぶたかげこぶた」小野 かおる (著)

ある日、お母さん豚と5匹の子豚が散歩に出かけると、子豚たちは自分たちと一緒に歩く何かに気づきます。それは「影」。子豚たちの影である「かげこぶた」なのです。真似っ子な影の性質に気づいた子豚たちは、思い思いのポーズをとって影遊びを楽しみます。

しかし、象の親子が通り過ぎた時、1匹の子豚の影が突然消えてしまいます。「ぞうさんの かげが、かげこぶたを たべちゃったのかな」という表現は、影の不思議さを詩的に描写しています。

この物語は、子どもたちに影の不思議さと面白さを伝えると共に、想像力を刺激します。美しい絵と巧みな言葉で表現された「こぶたかげこぶた」は、子どもから大人まで楽しめる、心温まる一冊です。ぜひ、この機会に手に取ってみてください。


「子どものことを子どもにきく」杉山 亮 (著)

著者の杉山亮氏が自身の息子に対して、3歳から10歳までの8年間にわたって行ったインタビューを記録した一冊です。

子どもの純粋な言葉を通して、幼児から少年への成長の過程が生き生きと描かれています。

この本の魅力は、子どもの視点から世界を見ることの大切さを気づかせてくれる点にあります。大人は、子どもの言葉に耳を傾けることを忘れがちですが、この本を読むと、子どもの発想の豊かさや感性の鋭さに驚かされます。例えば、5歳の息子が迷子になった経験を語る場面では、子どもならではの視点が面白くも考えさせられる内容となっています。

また、著者自身の保育士としての経験から、保育現場の実情や理想的な保育のあり方についても言及されており、子どもを取り巻く環境や大人の関わり方が、子どもの成長に大きな影響を与えることを実感させられました。ぜひ、手に取ってご覧ください。


「ととけっこうよがあけた」こばやし えみこ

真島節子さんの美しい絵は、日本の伝統美を現代的なデザインで表現し、親子で一緒に楽しむことができます。絵本を通して、わらべ歌の極上の「にほんご」を親から子へ、心を込めて語りかけることで、子どもたちは言葉の新鮮な体験を得ることができるでしょう。

子守唄やわらべ歌は、言葉のリズムや調べを通して、幼児の心を豊かにし、表現力を育てます。この絵本は、普段の生活では触れることの少ない、日本語の美しさと楽しさを存分に味わえる貴重な機会を提供してくれます。

ぜひ、この絵本を手に取り、わらべ歌の魅力を体験してみてください。


「うえへまいりまぁす」長谷川 義史 (著)

物語は、お母さんが花柄のビキニ姿、お父さんがパンダ柄のパンツ姿で買い物を続けるという、型破りな展開から始まります。

そこから、相撲売り場、忍者売り場、地獄の物産展と、次々と奇想天外な売り場が登場し、読者の想像力をかき立てます。

最上階の神様売り場では、自由の女神やキューピッド、七福神など、様々な神様が登場。そこには、ボブ・ディランやハーブ・オータといった意外なキャラクターも隠れています。

最後は、買いすぎた荷物でエレベーターが動かなくなるという、笑いと教訓を兼ね備えたオチで締めくくられます。ユーモアと創造力に満ちた絵本です。ぜひ、長谷川義史の世界観を体験してみてください。


「ぐるんぱのようちえん」西内 ミナミ (著)

ぐるんぱは、群れから外れた孤独なゾウ。でも、一生懸命に働く姿勢は、読者の心を打ちます。ビスケット屋さん、お皿作りの店、靴屋さん、ピアノ屋さん、自動車屋さんと、どこへ行っても、ぐるんぱの作るものは大きすぎて受け入れられません。それでも、ぐるんぱは諦めません。

転機は、12人の子どもを持つお母さんとの出会い。ぐるんぱは、子どもたちと遊ぶ中で、自分の真の才能を見出します。大きすぎるビスケットは子どもたちのおやつに、お皿はプールに、靴はかくれんぼの隠れ場に。ぐるんぱの作ったものは、全て子どもたちの笑顔につながったのです。

どこかに必ず自分の居場所が見つかるというメッセージを伝えてくれる、そんな特別な1冊です。ぜひ、ぐるんぱの世界を体験してみてください。


「にほんご」安野 光雅、大岡 信、谷川 俊太郎、松居 直

印象的なのは、この本を親子で読むことの大切さが説かれている点です。お母さんやお父さんの声で読んでもらうことで、子どもたちは言葉の意味や重要性を、より深く理解することができるのです。同時に、大人自身も自らの言葉の使い方を見つめ直す機会となります。

「にほんご」は、私たちが日常的に使っている言葉の力を、わかりやすく伝えてくれます。言葉は、私たちの生活のあらゆる場面で重要な役割を果たしているのです。この本を通して、言葉に目覚め、言葉への感覚を磨くことは、教育の根幹を成す営みだと気づかされます。

「にほんご」は、親子で共に学び、共に成長するための、かけがえのない一冊となると思います。言葉の力を再発見し、豊かな言語感覚を育むために、ぜひ、手に取ってご覧ください。